留学Staff Studying Abroad

大石直樹 (H12年度入局)
留学先 (2010年4月~)Kresge Hearing Research Institute, Department of Otolaryngology Head and Neck Surgery, University of Michigan (Michigan, USA)

 みなさん、留学にはどのようなイメージを持っていますか?
 基礎研究での留学に興味はありますか?
 私は現在、ミシガン大学耳鼻咽喉科で内耳の基礎研究を行っています。ミシガン大学は日本ではあまり馴染みがありませんが、 耳鼻咽喉科は全米トップクラスの評価を長年得ていて、特に付属する聴覚研究所は世界で有数の研究所です。
 私は日本で臨床を10年行ってから、こちらで研究を行う機会をいただきました。実は日本での基礎研究の経験がわずかしかないまま、 アメリカでの研究の世界に飛び込みました。そして1年経ったいま、臨床医としての経験が基礎研究にも活かされている、ということを心から実感しています。
 たとえば耳鼻咽喉科では、外科的な手技・考え方を学びます。臨床で培われた技術は、基礎研究での微細な検体を正確に扱うことを助けてくれました。
そして何より、臨床症例について科学的に考えるトレーニングを続けてきたことは、基礎研究における研究の立案、結果の解釈などを大いに助けてくれました。
世界で有数の研究室に来て、慶應義塾大学耳鼻咽喉科で受けてきた臨床医としての教育の質の高さを改めて実感しました。そこには、基礎、臨床の境はありませんでした。
 海外で留学生活を送ることは、将来の臨床医としての視野をさらに広げてくれるだろうと確信しています。研修医を終えたみなさんも、 本格的な臨床医としての一歩をぜひ素晴らしい環境で踏み出してください。当教室は、自分の努力に応じて素晴らしい教育環境を提供してくれます。 将来、大きな夢を抱いたみなさんと一緒に働けることを楽しみにしています。(2011年4月 記)


水足邦雄 (1999年入局)
留学先(2009年9月~) Eaton Peabody Lab, Massachusetts Eye and Ear Infirmary Department of Otology and Laryngology, Harvard Medical School, Boston, USA

 2009年9月よりボストン、ハーバード大学関連病院のマサチューセッツ感覚器病院(MEEI)にて内耳の基礎研究に従事しています。 留学先のボストンは、アメリカでありながらヨーロッパの香りのする町で、まさに「旧き、よき街」といったところですが、一方ハーバード大学、 マサチューセッツ工科大学(MIT)などの有名大学が研究拠点を構える、一大科学産業都市の側面も持っています。私の所属するMEEIのEaton-Peabody研究所も、 世界最大規模の側頭骨病理ラボ、世界トップレベルの電気生理(写真は当施設自慢のABR/OAE測定室です)、 さらに2003年に世界に先駆けて内耳から幹細胞を単離したことで有名な場所です。私の所属するAlbert Edgeラボは 内耳再生をテーマに6~7人の研究員(ポスドクやHarvard-MIT programの大学院生)が在籍する新進気鋭の研究室です。 それぞれの研究員は「内耳再生」という大きなテーマのもと、各々個別のプロジェクトを進めています。研究室では様々な国からきた研究者が、 非常によい雰囲気のもと活発に研究を行っています。私は前任者である当教室の藤岡先生が作成した有毛細胞に特異的な細胞死を誘導する トランスジェニックマウスを用いて、in vivoでの内耳再生誘導に関する研究を主に行っています。 また仕事以外でも、ボストン周辺は極めて治安が良く、週末は家族との生活を満喫しています。
 私は1999年に横浜市立大学を卒業し慶應の耳鼻咽喉科に入局しましたが、入局したての頃は、 日々の臨床業務や手術のトレーニングなどに夢中で、まったく基礎研究には興味がありませんでした。 研修の甲斐あって専門医資格を取得すると、今度は「病気を治す」ことだけでなく、「直らない病気」をどうするか、に意識が向くようになり、 臨床の合間に難聴の基礎研究を始めました。幸い当教室には臨床だけでなく、基礎研究においても極めて優れた指導者がおり、 手術や臨床研究の傍ら基礎研究の指導を受けることができ、慶應に助教として帰局した際には学位も取得することができました。 そして現在、研究を始めた頃からの念願であったアメリカ留学をしています。 他大学出身の私に、臨床だけでなく研究および留学の機会を与えていただいた小川教授および教室の諸先生方には本当に感謝しています。 慶應の耳鼻咽喉科は、技術や知識を身につけることだけでなく、自分の可能性を最大限引き出してくれる、そんな魅力的な教室だと思っています。 (2010年4月 記)


山下拓 (平成7年入局)
留学先(2009年4月~) The University of Pennsylvania, School of Medicine, Department of Otorhinolaryngology - Head & Neck Surgery, Gene and Molecular Therapy Laboratory

 留学前は頭頸部癌を専門として臨床に従事しておりました。大学はもちろんのこと、慶應には関連病院も地域中核病院が多く、 非常にたくさん の症例を診療することができました。しかし、同時に現在の手 段ではどうにもならない診断治療の限界もよく見えるようになりました。 そして現状を打破する基礎研究がしたくなりました。  現在私は、教室のご厚意で米国東海岸のフィラデ ルフィアにあるペンシルバニア大学で頭頸部癌の遺伝子治療の研究を行っています。 ウイルスベクターを用いた遺伝子修復因子阻害による化学療法・放射線治療感受性向上を目的 とした治療実験が主なテーマです。 Break throughとなるような新治療の開発は簡単ではありませんが、そこへ近づく努力をすることは魅力的で有意義な経験です。 基礎医学 的視点から実地臨床を見直すこと、海外より日本の臨床現場の特殊性を見つめること、そして言語習慣の異なる地での生活という貴重な経験をすること、 など非常に濃い時間を過ごしています。たとえどのような道に進もうとも、医 師は一生勉強です。慶應義塾大学耳鼻咽喉科は、その為の最高の環境を与えてくれる所です。 皆様もここから新たな第一歩を踏み出してみませんか。 そして輝ける未来を自身で切り開いて下さい。意欲あふれる皆 さんと会えることを楽しみにしています。

(左から3番目が筆者)

増田 正次 (平成9年入局)
留学先(2007年7月~) University of California, San Diego, School of Medicine, Division of Otolaryngology, Department of Surgery, Research Section

 サングラスとサーフボードを持って来なさい。たとえ、基礎研究の暗い迷宮に迷い込んでもSan Diegoの太陽があなたを照らし続けてくれます。  というようなところに耳の研究をやりに来ています。H9年に入局した当時は、こんなに研究をする気になるとは微塵も思っておらず臨床一筋でしたが、 やってみると研究もまた魅惑的な世界です。何ごともやってみないと分からないものです。そして何でもやらせてくれるのが我が耳鼻咽喉科学教室です。 我が教室は臨床の分野でも選択肢が多岐にわたりますが、更に研究の分野でも東海岸か?西海岸か?はたまたヨーロッパか!?と選択肢は世界に広がります。  ではCaliforniaはSan Diegoにて、大志ある若い皆さんとお会いできることを楽しみにしております。(2008年4月 記)

写真:研究室のメンバーと共に

(右から2番目が筆者)

荒木 幸仁 (1997年入局)
The University of Pennsylvania, School of Medicine, Department of Otorhinolaryngology - Head & Neck Surgery, Gene and Molecular Therapy Laboratory (Philadelphia, USA) 研究留学中

 正直に言うと、留学には全く関心がありませんでした。入局後5年ほどは慶應病院、関連病院での臨床研修のみに没頭し、 研究の「け」の字も無い生活でした。ただ大学に助手として戻り、臨床の傍ら喉頭研究班で研究を始め、少しは面白みを感じるようになっていきました。 慶應大学は臨床と同様に研究にも非常に重きを置いており、最先端を行く指導者に恵まれています。そういった環境の中で、 臨床のみならず基礎医学的な考え方を学べたことは、臨床にも役立つ非常に大きな収穫でした。  その後研究留学のチャンスをいただき、2006年からペンシルバニア大学耳鼻咽喉科で頭頚部癌遺伝子治療の研究をおこなっています。 海外で生活するだけでも貴重な経験ですが、米国トップクラスの大学での研究は日本よりさらに恵まれた、とても有意義なもので、 昨年のThe American Laryngological, Rhinological and Otological Societyでは幸運にもPoster Awardを受賞することもできました。  入局当初は全く想像できませんでしたが、慶應で良き指導者に恵まれ、臨床・研究ともに大変熱心にご指導いただき、 海外でも多少は評価される仕事ができるまでになりました。これらの経験をいずれは臨床に生かしていけるように今後も取り組んでいければと思っています。 みなさんも慶應の耳鼻咽喉科から世界を目指してみませんか?(2008年4月 記)

(左から2人目が筆者)

藤岡 正人 (平成14年入局)
留学先(2006年9月~) Eaton Peabody Lab, Massachusetts Eye and Ear Infirmary Department of Otology and Laryngology, Harvard Medical School

 私は2006年9月よりボストン、ハーバード大学関連病院のマサチューセッツ感覚器病 院(MEEI)にて内耳の基礎研究に従事しております。 ボストンは、アメリカ独立戦争か ら建国までの歴史が街の随所に刻まれ、欧米風の街並みが残された風光明媚な「旧き、 よき街」であると同時に、 Harvard, MITなどを抱えた世界有数の学園都市でもありま す。私の在籍するMEEIのEaton-Peabody研究所は、歴史ある側頭骨病理ラボと世界トッ プレベルの電気生理に加え、 2003年に世界に先駆けて内耳から幹細胞を単離したこと で有名な場所であり、ここならプライベートも研究も楽しめると思って留学先に選び ました。  Albert Edgeラボは常時6~7人の研究員(ポスドク)が在籍する、アットホームな雰囲 気の研究室です。otosphere法、ES細胞からの内耳細胞誘導、 コルチ器の器官培養といっ た基本技術を核に、さまざまな分子生物学的手法を駆使しながら、主に内耳再生をテー マとして多岐にわたる研究をすすめています。 私はかねてからの自分の興味である、 内耳細胞への免疫寛容に関する研究を主テーマに実験をしています。研究員は各々が 自分のプロジェクトを持ち、 ボスや周囲と相談しながら自分のペースで実験を進める 形式です。私も、自由にのびのびと、しかし妥協することなく研究を進めるとともに、 家族と北米生活を満喫しております。 社会に果たす医師の責務の中には、最高の医療の提供と同時に疾患の理解や新規診断 法・治療法の開拓といった基礎研究も含まれるわけですが、 耳鼻咽喉科という比較的 マイナーな科においても世界トップレベルの研究室に医局員を派遣し、最先端の研究 を常に取り入れ、 新しい知見を見出しては発信し続けているのは、“基礎医学・臨床医 学一家族の如く”という建学以来の精神を持つ慶應ならではのことと思います。 貴重な海外留学の機会を与えてくださった小川教授、さまざまなアドバイスを下さり 後押ししてくださるいつも暖かい医局の先生方に感謝申し上げます。(2008年4月 記)

写真:研究室の仲間

(左から2番目が筆者)
ボストンの風景